丸亀製麺でうどん食べてたら壁に讃岐富士(飯野山)の写真が貼ってあって、「やたらきれいな正規分布だな……」って思った、という話をうこさんから聞いた。
それをきっかけに「山の形って数学で表せるの?」って調べ始めたらめちゃめちゃおもしろかったので、記事にします!🏔️
まず讃岐富士ってなに?🍜
讃岐富士は正式名称・飯野山(標高422m)。香川県丸亀市と坂出市の境にある孤立峰で、讃岐平野にスコーンってそびえ立つ円錐形がとても美しい山です。
見た目は富士山みたいだけど、実は火山じゃない!
飯野山 - Wikipedia によると、飯野山は火山ではなく「ビュート」または「火山岩頸」と呼ばれる地形です。ビュートとは、もとはもっと広い台地(メサ)だったものが、長年の侵食によってどんどん削られ、最終的に孤立した小さな丘になったもの。残丘(ざんきゅう)とも言います。
香川大学の地質研究(讃岐七富士の地質構造)によれば、飯野山の生い立ちはこんな感じ:
- 約1,400万年前(中期中新世)、瀬戸内地域で大規模な火山活動が起こった
- そのとき噴出したサヌカイト質安山岩(超硬質の火山岩)が、もともとそこにあった花崗岩の上に不整合に重なった
- その後1,000万年以上かけて、周りの柔らかい岩がどんどん侵食されていった
- 硬い安山岩は侵食に強くて残り、結果的に円錐形の孤立峰ができた
注目ポイントは、「なぜ円錐形なのか」です。安山岩が硬くてキャップロック(帽子のように山頂を覆う硬い岩)になっていることに加えて、山頂の安山岩と山麓の花崗岩の境界に凝灰岩(地滑りしやすい層)がないことが重要らしい。
凝灰岩があると「地すべり」が起きて、山体が均等に崩れずにデコボコになってしまうんだって。でも飯野山の場合はそれがないため、雨や地震による崩壊が全周にわたってほぼ均等に起きる。これが円錐形を保つ理由というわけです (´∀`*)
火山の場合:粘性と山の形の連続数理モデル
さて本題!火山の場合、マグマの粘性と山の形の関係はどんなふうに数式で表せるんでしょうか?
SiO₂含有量と粘性
まず基礎から。マグマの粘性は主にケイ素(Si)の含有量で決まります。
| マグマの種類 | SiO₂含有量 | 粘性 | 典型的な火山形 |
|---|---|---|---|
| 玄武岩質 | 低(〜50%) | 低い | 盾状火山(ハワイのマウナロア等) |
| 安山岩質 | 中(〜60%) | 中程度 | 成層火山(富士山等) |
| デイサイト・流紋岩質 | 高(〜70%以上) | 高い | 溶岩ドーム、オベリスク |
この「盾状・成層・溶岩ドーム」という分類は確かに大雑把な離散表現!連続的なモデルは実際に研究されています。
Fink & Griffiths (1998) の無次元数モデル
Fink & Griffiths(1998)「Morphology, Eruption Rates, and Rheology of Lava Domes: Insights from Laboratory Models」は、溶岩ドームの形態と粘性・噴出速度の関係を実験室モデルで系統的に調べた古典的な研究です。
これがすごいのは、形態を1つの無次元数 Ψ(プサイ) で連続的に表せることを示したこと。Ψはざっくり言うと:
Ψ = 溶岩が固化するのにかかる時間 ÷ 溶岩が噴出速度で広がるのにかかる時間
- Ψ が小さい(すぐ固まる)→ 溶岩が広がる前に固まってしまう → spiny(棘状) → オベリスク形
- Ψ が中程度 → lobate(葉状)、platy(板状)と段階的に移行
- Ψ が大きい(なかなか固まらない)→ 溶岩が十分広がれる → axisymmetric(軸対称の平たいドーム) → パンケーキ形
この Ψ の値が連続的に変わると、ドームの形も滑らかに変化します。「4種類」に分類しているのは便宜上で、実際は連続スペクトルです!(・∀・)
逆問題:形から粘性を推定する
さらに最近は逆問題のアプローチも進んでいます。つまり「形を観測して、粘性を推定する」というやつ。
Starodubtseva et al. (2021)「A Method for Magma Viscosity Assessment by Lava Dome Morphology」では:
- ナビエ・ストークス方程式ベースの数値シミュレーションで、様々な粘性・噴出速度の組み合わせについて溶岩ドーム形状のデータベースを作成
- 実際に観測された溶岩ドームの形状と、データベース内の形状を画像処理技術(SSIM = 構造的類似性指標)で比較
- 最もよく一致した形状のシミュレーション条件から、粘性を逆算
コンピュータビジョンと火山学を組み合わせた、なかなか面白いアプローチですよね!
また、Zeinalova et al. (2021) のFrontiers論文では、メキシコのコリマ火山の溶岩ドーム成長(2007〜2009年)を数値モデルで再現。粘性の連続的な変化がドームの縦横比にどう影響するか詳しく調べています。
「粘性が高いほどドームは高く(縦長に)なり、横方向への広がりが減少する。したがって粘性はドームの高さと広がりを連続的にコントロールする」
粘性 η は結晶含有率 φ の関数として定式化されていて:
- 結晶がほとんどない → 粘性低い → 広がる
- 結晶が増える → 粘性が指数関数的に増加 → どんどん縦長に
という連続的な関係。粘性は 10⁵〜10¹⁴ Pa·s のレンジで、形状もそれに対応してなめらかに変化します。
侵食の場合:山の形は何に収束するか?
こっちがまた激アツで、最初の直感がかなり当たってる結果になってます!🎉
定常状態地形のヒプソメトリー
地形学では「ヒプソメトリー(hypsometry)」という概念があります。これは、ある地域の標高分布(どの標高帯にどれだけの面積があるか)のことです。
隆起と侵食のバランスが取れた「定常状態(steady state)」に落ち着いたとき、標高分布は……
侵食の主なプロセスによって異なる分布に収束する!
河川侵食 → 指数分布
川による侵食が支配的な場合、定常状態での標高分布は指数的な形になります。数式で書くと:
a(z) ∝ exp(-z/λ)
z が標高、λ が特性スケール(隆起速度・侵食しやすさ・降水量などで決まる)です。
氷河侵食 → ガウス分布(正規分布!)
そして面白いのがここ!氷河が主な侵食プロセスの場合。
Banerjee & Scherler(2025)「Steady-State Surface-Elevation Distribution of Idealized Glaciers and Rivers」(Geophysical Research Letters掲載)では、ストリームパワー侵食則と、標高に線形依存する氷河の質量収支を使って定常状態を解析的に導出。すると:
氷河侵食が定常状態に達したときの標高分布は、ガウス分布(正規分布)になる。
数式で書くと:
a(z) = a₀ · exp(-(z - ELA)² / 2σ²)
ここで:
- ELA = 氷河の平衡線高度(積雪と融雪がつりあう標高)
- σ² = u / (αg × β) ← 隆起速度 u、氷河の侵食係数 αg、質量収支勾配 β で決まる
1次元の数値シミュレーションと照らし合わせても、ほぼ完全にガウス分布に収束することが確認されています!
一般的な侵食でも……
氷河に限らず、長期の風雨侵食(流水・崩壊・拡散)が均質に働いた場合も、山体の標高分布は正規分布に近づく傾向があるとされています。
台湾の山地を対象にした研究 Cheng et al. (2012) では、テクトニクスと侵食がバランスした「定常状態地形」にある流域では:
- ヒプソメトリー曲線が「S字形」
- 標高のヒストグラムが正規分布に近い
- 面積積分値(ヒプソメトリー積分)が約 0.5
という特徴があると報告されています。
つまり、「長い時間をかけて均質に侵食された山は正規分布っぽい形に近づく」という直感は、ガチで正しかった!草
讃岐富士に話を戻すと
さて、丸亀製麺に戻りましょう。讃岐富士は火山でも氷河地形でもなく、「ビュート(火山岩頸の残丘)」です。それでもあの美しい円錐形が生まれた理由をまとめると:
- 硬い安山岩のキャップロック構造が、侵食に対する「カサ」として機能している
- 凝灰岩がなく地滑りが起きにくいため、全周が均等に侵食される
- 均等な侵食が長期間続いた結果、円錐形という「エントロピー的に安定な形」に収束した
均質な侵食→正規分布収束という数学的な予測と、讃岐富士の地質メカニズム、実はとても整合的なんですよね (´∀`*)
富士山との比較も面白くて、富士山は火山としてのマグマ噴火(安山岩〜玄武岩の成層火山)で形成された円錐形ですが、讃岐富士は真逆の「削られて円錐になった」という経緯です。出発点は全く違うのに、見た目は似てる……自然ってすごい。
まとめ
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火山の形と粘性の連続モデル:Fink & Griffiths (1998) の「固化速度/噴出速度」の無次元数 Ψ で溶岩ドームの形態は連続的に変化する。粘性が高いほどオベリスク形、低いほどパンケーキ形に。数値シミュレーションと機械学習でさらに精緻化されている。
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侵食による山の形の収束:Banerjee & Scherler (2025) により、氷河侵食+隆起の定常状態では標高分布がガウス分布(正規分布!) に収束することが理論的に証明された。河川侵食では指数分布。
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讃岐富士:1400万年前の瀬戸内火山活動の産物が長期侵食で残丘になったもの。硬い安山岩のキャップロックが均等侵食を実現し、美しい円錐形を生み出している。
うどんを食べながら「正規分布みたいだな」って思う直感、むしろ地形学的にはかなり正しかった!🍜✨
参考
- 飯野山 - Wikipedia
- 讃岐七富士の地質構造(香川大学・長谷川ほか)
- 日本の地質百選:讃岐富士
- Fink & Griffiths (1998) - Lava Dome Morphology, Eruption Rates, and Rheology
- Starodubtseva et al. (2021) - A Method for Magma Viscosity Assessment by Lava Dome Morphology
- Zeinalova et al. (2021) - Lava Dome Morphology and Viscosity Inferred From Data-Driven Numerical Modeling (Frontiers)
- Banerjee & Scherler (2025) - Steady-State Surface-Elevation Distribution of Idealized Glaciers and Rivers
- Cheng et al. (2012) - Scale independence of basin hypsometry and steady state topography


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